2017年9月9日

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全学労連ニュース今号の内容

 人事院勧告を読んでみたら・・・  プラスの勧告でも、暗い未来しか見えてこない

 「共同実施」関連法の省令で明らかになったことB  文科省の想定外であっても「共同学校事務室」が東京都の「共同事務室」に転化しない保障は無い

 第46回 全国学校事務労働者交流集会(全交流・神戸)開催  初!全学労組との一部乗り入れ開催!  教員と事務職員の問題で、交流を深める

 第46回全国学校事務労働者交流集会‐神戸 集会宣言

人事院勧告を読んでみたら・・・

プラスの勧告でも、暗い未来しか見えてこない

 人事院は8月8日に月例給、一時金の引き上げ等の勧告を行った。

 給与制度の総合的見直しの最終年ということで、中央官庁勤務者に大盤振る舞い。また、政府の「働き方改革」に絡めながら非常勤、定年延長についても報告した。

勧告本文は次の人事院のWEBを参照( http://www.jinji.go.jp/kankoku/h29/h29_top.htm )

プラス勧告だけれど・・・

 人事院が出した官民格差は631円(0.15%)。「若年層に手厚く、中高齢層に薄く」というのが、このところの配分方式だが、今回も同じ傾向だ。初任給と若年層は1000円で、その他の年代は400円の引き上げ。

 さらに、官民格差の20%相当分を本府省手当に配分した。「総合的見直しを円滑に進める観点から」という説明だが、中央と地方との格差をあからさまにするやり方。「都会と田舎」はすでに地域手当でついているにもかかわらず。中央官庁の役人はエライんだと言わんばかりだ。

 一時金は0.1月の増。今回も勤勉手当への配分だ。

給与・総合的見直しの完成で格差は固定化

 給与制度の総合的見直しは今年度が見直し最終年度。今回の人勧でその完成形が示された。本府省業務調整手当は、係長級は6%相当額、係員級は4%相当額に引き上げられる。また、55歳超えの管理職層に行われてきた1.5%減額措置は廃止。減給保障も廃止される。

 総合的見直しは、俸給表水準を引き下げる一方で、それにより生じた原資を用いて、段階的に諸手当の見直し等するというもので、見直しのポイントとされる3項目(地域間の配分、世代間の配分、職務・勤務実績に応じた配分)を改めてみてみると、これらによって公務員の生活はズタズタにされたことを実感する。

 見直しにより減給保障を受けてきた多くの人たち(半数弱がその対象者!と言われる)は、実際の支給額が改善されることなく、賃金がここ数年据え置かれたままで放置されてきた。そして、制度完成時の2018年度にはそうした状況が固定化されるばかりか、引き下げという不利益を強いられてしまうのだ。

長時間労働は是正できるのか

 安倍政権は「働き方改革」を標榜して議論をしてきているが、今回の人勧ではそれに絡めた言い回しをしてきている。

 長時間労働の是正について、「マネジメントの強化や業務削減・合理化」といったこれまでの施策を強調するのみ。その是正に向けた制度整備については「上限規制にかかる民間法制の議論等を踏まえ、各府省や職員団体等の意見を聴きながら・・・検討」と主体性を疑わせるような書きぶりだ。

非常勤職員の「均等待遇と雇用の安定」の道筋は見えない

 非常勤職員に関しては、「勤勉手当の支給に努めることを追加した指針に沿った改善が行われるよう各府省を指導」「慶弔に係る休暇等の検討」に止まっている。非常勤職員に勤勉手当の制度を入れるということは、成績主義を非常勤に導入するということだ。同一労働同一賃金の議論を踏まえて「慶弔休暇」ということだが、他にやるべきことはもっとあるはずだ。

 「改正」したとされる指針を改めてみてみると、(1) 類似する常勤職員の職務の級の初号俸の金額を基礎とし、職務内容及び職務経験等並びに在勤する地域の要素を考慮、(2) 通勤手当支給、(3) 任期が相当長期の場合には期末・勤勉手当、ということを言っている。人事院は指針を示すのみで、制度は各府省が決めることになっているので、これがどこまで徹底されているのかは不明だが、問題は、非常勤職員が弱い立場に据え置かれ、いつ雇い止めになるのかわからない、というところにある。

 均等待遇と雇用の安定、これが確実に確保できる道筋を示さなければ、人事行政に責任を持つ人事院としての役割は果たされない。

[非常勤職員の給与に関する指針]はこちら

高齢層も食べることができる給与を

 再任用の給与については、月例給・一時金とも若干の改善はあったが、制度設計上の様々な課題は「定年の引上げに向けた具体的な検討との整合性にも留意しながら、引き続き、必要な検討」と先送りされた。

 再任用の給与についてはかくのごとく切実な要求がある。これらについては何も語られることはなかった。

 今回の定年延長の議論の出始めは、6月の「骨太方針」だ。

 これは団塊の世代の大量退職が落ち着き、60歳〜65歳の層が減少するという事情が大きく働いている。仮に定年延長したとしても大量の高齢者を抱えなくてもいいということだ。さらに、現行再任用が短時間という「補完的業務」が主流だが、高齢層が大量にいなくなるのと相まって、これまで培われてきた経験、技能・ノウハウを継承できなくなるという危機意識の表れでもある。人事院はこの間、短時間よりもフルタイムをと言ってきているが、60歳までの職責を60歳以降も担わせようということを意味する。年金支給開始年齢が後ろへずらされる中にあって、生活できるだけの雇用が確保されるべきだと思うが、死ぬまで馬車馬のように働かせるやり方には賛同できない。

 もっとも、2011年の定年延長に向けた意見の申出以降、無視され続けられてきた人事院の面目はここで回復されるのかはわからない。「平成23年の意見の申出以降の諸状況の変化も踏まえ、論点整理を行う」と人事院は言うが、公務員法上の人事院の位置が低下している状況の中で、実際の制度についてはそれほど期待することはできない。

人事院の役割って何なんだ

 公務員法から「職階制」が削除され、人事評価制度が導入されて以降、人事院・人事委員会の位置は相対的に低下してきている感がある。それは「労働基本権剥奪の代償」の意味も含めてのことだ。

 人事院の役割は、公務員の労働条件を「賃金」にのみ切り縮め、公民格差を出してその配分を機械的にはじきだすだけの計算機になってしまっている。そして政府・財界が提起する諸課題を「第三者」というフィルターを通して追認していく。国家公務員法上の人事院の位置づけを見ると、それも当然か。

 さて、これから各地の人事委員会勧告が出される。結局は今回の人事院勧告をなぞるようなものしか出てこないのだろうが、少しは明るい未来を見つけたいものだ。



「共同実施」関連法の省令で明らかになったことB

文科省の想定外であっても「共同学校事務室」が
 東京都の「共同事務室」に転化しない保障は無い

 東京都の「共同実施」は、複数の学校を拠点校と連携校にグループ化し、拠点校には「共同事務室」を置き、そこに都費事務職員を複数名配置する。配置される職員数はグループ内の学校数よりも少なく、連携校には都費の非常勤職員が配置されるが、雇用は不安定であり賃金も低く勤務日数も限られている。すなわち学校現場には常勤フルタイムの学校事務職員はいなくなり、定数標準法で定められた職員数は守られていないし、人件費も安く抑えられている。「共同事務室」では各校から上がってきた書類に基づいて処理をするのだが、そこの都費事務職員は学校現場の教職員や生徒と直接話をする機会もその必要もない。ならば「共同事務室」は学校内にある必要はないではないかと思うが、家賃の高い東京都で少子化により余った教室を活用できるし、そして何より文科省も言う通り、学校内に置くことで学校職員として義務教育費国庫負担制度の恩恵にもあずかれるというわけだ。「共同実施」の目的は、「事務の効率化」とか「業務改善」というが、現場から事務職員を引き剥がすことが現場の業務改善に役立つとも思えない。

 文科省の省令は「共同学校事務室」の概要を次のように述べる。

@ 教育委員会は、教育委員会規則で定めるところにより、その所管に属する学校のうちその指定する二以上の学校に係る事務(学校教育法第37条第14項の規定により事務職員がつかさどる事務その他の事務であって共同処理することが当該事務の効率的な処理に資するものとして政令で定めるものに限る。)を当該学校の事務職員が共同処理するための組織として、当該指定する二以上の学校のうちいずれか一の学校に、共同学校事務室を置くことができることとすること。(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)新第47条の5第1項関係)

  また、「共同処理することが当該事務の効率的な処理に資するものとして政令で定めるもの」とは、教材、教具その他の備品の共同購入に関する事務、教職員の給与及び旅費の支給に関する事務、その他共同学校事務室に置いて共同処理することが効果的な処理に資するものとして教育委員会規則で定めるものであること。(地教行法施行令新第7条の2関係)

A 共同学校事務室に、室長及び所要の職員を置くこととし、室長は、共同学校事務室の室務を.つかさどるものとすること。(地教行法新第47条の5第2項及び第3項関係)

B 共同学校事務室の室長及び職員は、@による指定を受けた学校であって、当該共同学校事務室がその事務を共同処理する学校の事務職員をもって充てるものとすること。(地教行法新第47条の5第4項関係)

C A及びBのほか、共同学校事務室の室長及び職員に関し必要な事項として、地教行法施行令において、市町村の教育委員会が、県費負担教職員を共同学校事務室の室長又は室員に充てようとする場合には、その任命権者である都道府県教育委員会の同意を得なければならないこととしたこと。(地教行法施行令新第7条の3関係)

@にある通り、複数の学校のいずれかに共同(学校)事務室を置き、そこで学校の事務を処理するというのはどちらも共通している。違いはBにあるように文科省の言う「共同学校事務室」の職員は「共同処理する学校の事務職員をもって充てるものとする…」とあり、東京のように学校現場から引き剥がして「共同事務室」に配置するのではないということだ。あくまでも定数標準法に基づいて配置された学校事務職員が前提であり、その上での「学校共同事務室」ということなのだろう (その場合でも出張か兼務か服務の対応は不明だが、職場から離れる時間が増えるには違いない…) 。このことから文科省は「東京型は想定していない」と言っているのだろう。

 しかし定数標準法が前提といっても、総額裁量制や給与費の1/3国庫負担率によって、学校事務職員の定数割れや臨時的任用者の増加が全国的に進行していて、その前提自体が危ういという現実はこれまで何度も我々が指摘してきたことである。東京都は学校事務職員の定数割れが跳び抜けて多いというのは周知の事実だ。文科省は、その東京都でさえも「違法とは言えない」として、是正させることが出来ないでいる。それどころか今年の7月の全学労連との交渉の場で、都教委は教育に支障があるとは言っていない(だから良いんだ…?)と居直る始末だ(「全学労連」397参照)。

 文科省がこんな調子では、いかに省令で定めようと「共同学校事務室」が勝手に独り歩きを始めるのは必至である。Cの規定はそうならないよう、任命権者による歯止めをかけようということなのだろうが、東京都の場合はその任命権者が給与支払者と一体化して学校管理者を巻き込み暴走しているわけで、歯止めになるか怪しいものだ。全国に20ある政令指定都市では、既に学校管理者と任命権者が一体であったのに加え、今年度から教職員給与費の移管により給与支払者も政令市となった。ここではもう何の歯止めも無くなっている。決めるのは文科省ではなく、各自治体なのだ。文科省の言う通り学校事務職員を配置した上の「共同学校事務室」と、一つの自治体内で事務職員の定数も給与費も削減できるし、国庫負担の対象にもなる東京型の「共同事務室」。政令市の財政当局にすればどちらが魅力的に見えるだろうか。今後の中核市への移管の話もありさらに広がる恐れもある。

 「共同実施」とか「業務改善」とか「チーム学校」とか言う前に、文科省は1校1名以上の学校事務職員枠を広げる努力を真剣にしたらどうだろうか。学校事務職員の欠員が進行する状況を放置していては、学校事務職員の国庫負担不要論が復活しないとも限らない。



第46回 全国学校事務労働者交流集会(全交流・神戸)開催

初!全学労組との一部乗り入れ開催!

教員と事務職員の問題で、交流を深める

 1日目 8月19日(土) 

 8月19日、20日、兵庫県、神戸市において全国学校事務労働者交流集会が開催された。神戸での全交流開催は、阪神・淡路大震災から2年を経過した1997年以来20年ぶりとなる。

 冒頭の開催地挨拶で、全学労連兵学労の小山さんは、「兵庫自教労連と兵学労は一体の組織として活動している。そんな兵庫の状況下で初めて共同開催となったことを大歓迎する」と述べた。また、この間の全学労連の国庫負担堅持への取り組みや、近年の共同実施やチーム学校など事務職員課題を語った。また全学労組兵庫自教労連の檜尾さんは、「5年ぶりの神戸開催、全学労組・全学労連の発展のために力を合わせ頑張っていきたい」と、心強く語った。

●問題提起●

 問題提起は全学労組3本、全学労連2本で行われた。

T 「森友・教育勅語・道徳教科化問題」(大阪教育合同・増田)

 この間の教育合同ニュースから、森友問題における問題点を提起した。木村真市議が疑義を抱いた国有地不正取得問題をきっかけに、幼稚園で教育勅語を唱えさせているらしいということで、マスコミにも大きく取り上げられ、地元でも大きな関心ごととしていくために集会や講演を開いてきた。また、府への申し入れや交渉をすることにより、他団体とも連帯していることなどが語られた。また、「道徳の教科化をきっかけに教育勅語を認めるような発言がなされていることがあるが、これは天皇制、国家体制維持のために使われていく恐れがあるため、オリンピック問題、日の丸問題とともに考えていかなければならいない」と語った。

U 「教員の働き方改革に逆行する横浜の市費移管」(横校労・平川)

 横浜市の労働条件一覧表の資料等に沿って市費移管問題を提起した。給料表が変わることにより、生涯賃金1,000万円減や、それに付随する退職手当の減など政令市費職員にされることにより、大幅な労働条件改悪が語られた。また、庶務事務システム導入により、事務職が作成していたことが本人入力に代わることにより、間違いと事務量が増えたことが語られた。出退勤に関しては、タイムカード導入により、出勤時間のみの記録で、退勤は野放しだという。「多忙化解消どころか拍車をかけている庶務システムの問題は、当局を追及していきたい」と語った。

V 「政令市費化と共同実施」(がくろう神奈川・伊藤)

 川崎での政令市費化状況を交え、がくろう神奈川ニュースと、レジメにより事務職員課題を提起した。休暇制度や人事評価についてはおおかたが川崎市よりに合わせられたことにより悪化し、県と市の考え方や制度の違いで生まれる壁の厚さがあることが語られた。学校事務職員の在り方については、行政職員として任用一本化の議論があったことが語られた。当面学校事務採用存続ということになったが、この4月の法改正により職務標準が変更され、研修制度見直しや共同実施の推進など事務職員課題は多く、「任用一本化を念頭に置いた動きに注視し闘っていきたい」と語った。

W 「東京における教員の勤務時間の適正な把握」(アイム‘89・高倉)

 アイムの活動状況を交え、「ブラック企業化」する学校の問題を提起した。最近になって新聞紙上などでも教職員の労働時間や多忙化が取りざたされ、任命権者や服務監督者である各自治体が負担軽減に取り組みはじめたが、かえって負担増になっている矛盾点が語られた。また、根気よく、広い範囲の地教委交渉を繰り返しすることによって情報を得て、次の地区の交渉で情報交換などにより優位に立てることなどが語られた。「東京では事務の共同実施が多摩地区で進められているが、歪んだ形にならないように、少しでも実がとれるように取り組んでいきたい」と語った。

X 「総括的な教育改革・この20年ほどの教育改革の大雑把な総括」(全学労連・佐野)

 1998年の中教審答申が、今般の学校をめぐる問題の大きな出発点になっていることを、レジメに沿って解説し問題点を提起した。また、地方分権や三位一体の改革による国と地方の役割分担や財源問題などから、教職員給与費に総額裁量制が入り、定数の弾力化が行われていることを指摘。政令市費化や「チーム学校」構想により、「業務改善」や「働き方改革」など労働条件改悪への道を進む危険性が語られた。「小手先の政策についてどうこう言うばかりの大手の組合が動かない中で、何のための労働組合なのか、我々は声を挙げていくという視点を持ち続けていきたい」と語った。

●質疑・討論●

 質疑・討論では、問題提起を補足するように、各地での取り組みや、疑問点が語られた。特に政令市移管後の状況について、臨時的任用の空白の1日や、夏季一時金の減額など、各自治体さまざまな状況が語られ、参加者は次への取り組みへ生かすヒントとして積極的な意見交換がなされた。また、東京からはオリンピック・パラリンピックを3年後に控え、それを使った国家主義的な教育への利用されかねない懸念、北村小夜さんからは道徳の教科化による国家による内心の支配と現に起ころうとしている戦争への懸念などが発言された。

●闘争報告●

 闘争報告では、大阪教育合同から非正規雇用組合員の団体交渉をめぐる争いと看護師パワハラ問題での提訴の決意、埼教労から小学校校長の超過勤務強制での取り組みと闘い、沖学労から日米安保条約における沖縄県民の民意と政府見解・沖縄以外の日本人民意の違い、がくろう神奈川から新任事務職員Sさん解雇撤回闘争報告、福事労からは福島第一原発事故による避難者のその後と学校の状況が話された。

 2日目 8月20日(日) 

 2日目は全学労連・全学労組が会場もテーマも分かれて個別の開催となった。

●レポート「これからの学校事務制度を考える」●

@「東京の共同実施から今後の学校事務職員のあり方を考える」(ユニオン東京・宮崎)

 東京の共同実施のこれまでの推移とその背景が解説された。この間の7者協での取り組みによる一定の歯止め、「チーム学校」検討委員会による共同実施の矛盾の指摘などが紹介され、「学校現場主義」として多様化する様々な職種の学校労働者とつながり共に生きていく決意が語られた。

A「これからの学校事務職員制度」(福事労・菅原)

 「学校事務をつかさどる」に学教法が改訂され、それに見合った労働「働き方改革」が求められる。「職務標準」論と「チーム学校」の間で「共同学校事務室」というものが形成れていく。「学労的」に自分なりの仕事の仕方を創っていくことで、「共同実施」や「任用一本化」縛られない。その学校独自の仕事に生きることが鍵になるだろうと語った。

B「福島の人事評価賃金反映・『福事労ニュース』を通して伝えたもの」(福事労・皆川)

 全国的な人事評価の賃金への反映は福島も例外ではなかった。4団体と連帯し数回交渉に臨み、特昇の廃止・代替として導入しようする「公務貢献」について継続協議とした。また、勤勉手当支給率減額者分を「全員で山分け」だったものが評価上位者である95/100の者しかその恩恵を受けなくなるなど評価の問題点を語った。

●全体討論●

 全体討論では、はじめに今後の全学労連の組織や「共同実施」の現状などが議論された。また、レポートにあった今後の学校事務制度を「チーム学校」が求める教員負担軽減のために業務を請け負う事務職員は専門性を発揮していることになるのだろうかという議論がなされた。教員の多忙化をなくすのは誰かが肩代わりするのではなく、大事なのはそういう仕事をなくすこと、仕事の洗い直しであるという意見が出された。また、任用一本化が進むと学校事務職員制度は風前の灯となる、教員の議論と合わせて考えていきたいという意見や、職階制が進むことにより事務職員同士のでの上下関係や評価非評価の関係が生まれる、学校や職種にこだわるこれまでの「学労」運動も大事であるなどの意見が出された。

 最後に、議長からの行動提起がなされ、この闘いが秋の中央行動へ続いていくことが確認された。



第46回全国学校事務労働者交流集会‐神戸 集会宣言

 安倍政権は米軍と一体となった軍事演習で東アジア地域の緊張を高めている。中国の海洋進出や北朝鮮のミサイルの脅威を必要以上に煽り立て、教育勅語復活の閣議決定、道徳の教科化で国民意識を愛国心へと向かわせ、国家意識を高めようとしている。特定秘密保護法、戦争法、共謀罪法等、たてつづけに強行採決で法制化を進め、ついには改憲をもスケジュールに組み込むまでに至った。東日本大震災による原発事故の原因も責任も曖昧にしたまま原発再稼働を次々と進め、福島では避難地域一部解除により避難民への補償金を打ち切り、避難を余儀なくされた人々に対する新たな困難を押し付けている。沖縄では多くの反対の声を無視して高江・辺野古の米軍基地建設を強行している。その反面、森友学園への国有地売却や加計学園獣医学部新設への関与の疑惑に対しては、何らの説明責任を果たしていない。「アベノミクス」の幻想で推進してきた経済政策も成功しているとは言えない。「働き方改革」とか「女性活躍社会」と称して推進しようとした労働法制の改定も底の浅さを露呈した。

 この国の政府のこうした政策は、数の力を背景にした弱肉強食の論理そのものであり、こうしたこと全てが国民の不信を招き、内閣支持率は低下している。

 学校現場では多忙化による疲弊が社会問題化して、これにどう対応するかが喫緊の課題となっている。文部科学省は政府の政策に倣い「働き方改革」と称して、給特法・人確法の枠組みやこれまで積み重ねてきた学校現場への様々な締め付けを見直すことなく、多忙化をもたらしている業務の再配分を「チーム学校」と呼んで問題を解決しようとしている。

 学校事務職員に関しては、職務規定を「つかさどる」と変更し「共同学校事務室」を共同実施モデルとして提示する関連法の改定を行った。文部科学省は、これにより業務改善が図られ、学校の負担軽減となるとするが、給特法の見直しも職員の大幅増員も業務の縮減も無いままの「改善」は、学校事務職員を小役人化して官僚機構への取り込みをさらに強め、労働強化と職階制強化、差別と分断をもたらしていくことは明らかであろう。とりわけ今年度から給与費が移管された政令指定都市においては、給与負担と任用管理のねじれが無い分、行政との任用一本化等学校事務職員制度の崩壊が急速に進むことを警戒しなければならない。

 今後、人員削減を目的とした東京型の共同実施の拡散だけでなく、学校事務の新たな職務内容の規定や権限を伴った事務長・事務主任の制度化の動きが予想される。これに対して我々学校労働者がどう対処していくかが問われている。学労運動の原点である差別と分断に反対し、不当な業務の押し付けを拒否するという視点を、合理化反対の視点とともに今一度確認して運動を創り出していかねばならない。

 今年の全国交流集会の1日目の全体会は、初めての試みとして教員の自立した組合の組織である全学労組との合同で行われた。これまで共同で繰り返してきた秋の中央行動集会・デモの成果を更に進める取り組みであった。それぞれ今までの運動の積み重ねがあり、当然のことながら問題意識のズレも明らかになったが、互いにそれを学習しながら議論を積み重ねることによって、現場労働者の立場からの学校や社会全体に対する視点を更に強化できるものと考える。

 我々はこの集会の成果をもとに、今後もたらされるであろう様々な攻撃に断固として立ち向かっていく。

2017年8月20日

第46回全国学校事務労働者交流集会‐神戸参加者一同



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