2007.7.28 全国学校事務労働者交流集会基調報告

辛く悲しいご時世に立ち向かう

1 学校事務廃職攻撃

(1) 日教組事務職員部は、2007年4月24日に出した「小中学校への『長の配置』に関する常任委員会見解」で、「行(一)6級のために、学校事務の共同実施の『長』になろう」を労働組合の方針にすることを公然化した。以前から全事研と共同歩調の日教組事務職員部主流派の主張として不思議ではないが、驚くことに見解の中で、教育基本法改悪や教育三法案についての批判をまったくしていないのだ。むしろ中教審や教育再生会議で提案された「主幹や指導教諭」を評価し、「学校教育法改正案が成立しそうだから」と、主幹や指導教諭の登場を絶好の機会と捉え「学校事務職員も長にしてくれ」と懇願する、悲しい空しい提案であるのだ。

 これは「職名なんかどうでもいい」という、貸金のためには職名をつけるこれまでの要求とは異なるレベルだ。権力が狙う学校管理秩序の強化に悪乗りした提案なのだ。「日の丸・君が代」闘争を放棄した日教組だからこその「長にしてくれ」である。「君が代」を歌わない職員を権力に売り渡す事務職員になりたいのか。

(2) 全学労連ニュースNo295(5月13日)で「3級降格切替え」を報じた。これは2006年4月の「給与構造改革」で多くの県が行った単純な新給料表への切替えではなく、「降格切替え」を全県的に実施した鹿児島県の実態を分析したものである。他の県では旧6,7級から新4級、5級に切替えられたが、鹿児島では3級に落とされたのである。その結果3級113号に1311人(県職員全体の20%)にも上る数の人々が出現したのである。

 全学労連ニュースNo296(6月9日)では、2006年度に行われた13県の「ワタリ改悪」が総務省から公表されたことを報じた。そこには多くの県で「一般職員の3級格付け廃止、係長の5級格付け廃止」が行われたことが並んでいる。鹿児島の出来事はこれからはじまる大幅貸下げの先駆けなのだろう。現給保障で直ちには賃金引下げにつながっていないが、若者の将来貸金と多くの人の退職金は確実に落ちた。

(3) 7月19日総務省交渉で、自治行政局行政課公務員係長は地方公務員法改正案の説明メモを示し、次のことを明らかにした。

「能力本位の任用制度の確立」で、

 これは何を意味するのか。学校事務というひとつの職(若い者も年寄りも基本的には同じ仕事)を、ひとつの職制上の職に位置づけると、その級は一つになるということなのだろうか。そうなれば行(一)の2,3級すら行けないことになる。

(4) 7月22日、福島県の朝刊の求人情報広告に載っていたのは、正規採用求人は一握りで、大半は派遣労働者。時給は750円からで、自動車工場でも1200円だった。非正規雇用労働者が三人に一人、年収200万円以下が大半の現実がそこにある。

 月一関催している学習会に参加してくれる臨時事務職員の月給は186,800円で、ずっと賃上げなし。時給換算では1,158円になる。それでも彼女は、「この仕事を続けたい。この仕事の前にしていた幼稚園教諭はもっと安いし、超勤手当はもらえず、全部サービス残業だった。」といっている。

(5) 共同実施はどうなっているのか。共同実施加配は、研究加配を含めても536人に止まり、予算定数枠より193人少ないまま05年度で終わった。共同実施は群馬県など9県で全県実施している。群馬県の実施状況を最近の全学労連ニュースでは「茶番」と報告されている。それにしても学校事務の「改善」に役立った実践例はあるのだろうか。

2 「物語」はいらない

(1) 全事研は、「学校事務職員の社会的地位獲得」、日教組事務部は「学校事務職員労働条件抜本的解決は教員並み待遇」が大問題。そのためには何がなんでも「共同実施で出世」である。彼らも「共同実施」が合理化であり、学校事務職員の定数削減、臨時職員化につながることは理解しているのに、彼らは「自らは共同実施組織の長になれる」の「物語」に望みをかける。

(2) もうひとつ「子供のために」に価値を見出そうとする人々がいる。抑圧された労働現場で自らの労働に「崇高な意味」を付与し、その労働に励むことに「尊い救い」があるかのようだ。最近の「格差拡大社会」が彼らの献身をより必要としているはずで、その意味で「やりがい」はあるかもしれない。

(3) 自治労学校事務協もこの現実を前に「学校事務職員が楽しく職業生活を長く暮らせるための選択について議論を深めよう。」と、「自治労選択」の次にも「選択」が出てきてしまっている。そこに「長」はないでしょうね。

(4) 私たちは、残念ながら「物語」を語れないでいる。逆に学校事務職員の前に現れる「辛く悲しい現実」をあからさまにし、「それに立ち向かえ」と言うばかりであった。しかし、だからこそその行動の中に「学労的自由」を自ら見つけ出し、獲得してきたのだったが。

3 学校事務廃職攻撃に学労的行動を対置しよう(全交流で議論を)

(1) 絶望を希望に

 今でも、かなりの若者が「辛く悲しい現実」の学校から脱出を目指し、外の眩しい社会を目指し「羽ばたきたい症候群」の中にある。学校事務廃職攻撃はその願望を更に高めるだろう。しかし、外は時給700円の世界、学校事務で残っても、行(一)の3級止まりが近づく。望みは「長」だが、共同案施は実質が伴わず、地方公務員法改正で「公務員の任用制度の確立」されたら、学校事務職員には残念ながらその望みは回ってこないだろう。

 だとしたら、『長』を捨てる。もちろん私たちの最低の要求は「5級に早期(30歳代後半)に到達」であり、各県の「ワクリ改悪」に反対し、「新公務員任用制度」による賃金切り下げに抵抗し、あくまでも学校事務労働者の貸金改善を求める。その上で「『長』を捨てる」覚悟が必要になる。そこにこそ、学校で生きていく希望を見出せる。(30万円の覚悟)

(2) 居心地のいい職場に

 学校という職場は結構居心地の良い職場であった、と思う。広い事務室に少ない人数、仕事は自己完結型、時間配分も自主的判断、貸金はちょっと安めだが、まあ「実権」を持って職場でデカイ顔ができる。いまこの居心地が悪くなっている。貸金は悪くなる一方、仕事量は増え、財務システム、文書システムで仕事に縛り付けられている。

 今一度学校を居心地の良い場所にしていこう。まず現在の仕事を再検討しよう。文科省の「教員の仕事を請け負う事務職員の仕事拡大研究」ではなく、自らの仕事をコントロールする手法を開拓しよう。どうせ学校で事務職員の仕事は事務しかできない。

 もう一つほ臨時職員の労働条件改善が課題である。賃金上限規定、連続雇用制限、格付け級問題など労働条件が悪化し、また格差が拡大しているなか、取り組みは急を要している。文科省等中央省庁への要求行動、各雇用主費任の追及などを強化しよう。

 教員労働組合との関係強化も必要になる。学校を少しでも居心地の良い職場にするためにどういった共同の取り組みが作れるかを考えよう。

(3) 情報発信を

 全学労連の長い歴史で最もきちんとやってきたことは、情報を収集し、分析し、発信してきたことだ。義務教育費国庫負担制度の危機を訴え、最近は「辛く悲しい」実態を明らかにしてきた。今後も学校事務労働者のための情報発信機能を高めていこう。特に学校事務労働者制度の情勢、労働条件の実態、たたかいの紹介を中心にし、情報伝達媒体も紙のニュース、電子媒体、雑誌への投稿など、あらゆる手法を駆使していこう。

(4) 活動場所拡大を

 すでに多くの学労の活動場所ほ学校を超えた空間に広がっている。教育基本法改悪反対のたたかいではこれまで以上の広がりなかの共同闘争に参加した。全国的展開、地域の取り組み等の蓄積を生かして、今後の憲法改悪反対、戦争をする国家反対、愛国心教育反対などのたたかいに参加していこう。

 また、各地の学校労働運動、地域の労働運動に各学労の活動歴が持つ知恵と技を生かしていこう。


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